学習指導要領 改訂を中教審に諮問 生成AIの発展など踏まえ深い理解促す学びなど検討へ

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发布时间:2025-08-29 13:30

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諮問された検討課題は

小中学校や高校の教育目標や内容などを定めた学習指導要領は、おおむね10年ごとに改訂されていて、文部科学省は、25日の中教審の総会で、次の改訂に向けた検討を諮問しました。

それによりますと、
▼生成AIの発展などを踏まえ、知識の集積だけでなく、深い意味の理解を促す学びのあり方
▼デジタル分野を含めた先端技術の教育の充実
▼情報モラルやメディアリテラシーの育成強化などが
検討課題となっています。

また、
▼自動翻訳機などが普及する中での外国語教育のあり方に加え
▼子どもたちが多様な能力や個性に応じ、それぞれのペースで学習を進められる教材や方法なども、検討を求めています。

このほか、25日は質の高い教職員の確保に向けて、
▼社会の変化を見据えた教職課程や
▼教職員が生涯にわたってスキルを高められる研修制度
▼会社員などが、企業に在籍しながら教員として働ける任用形態のあり方などの検討も諮問されました。

文部科学省では、2026年度中に中教審から答申を受け取り、新たな学習指導要領の策定を進める計画で、2030年度以降、小学校から順次、実施に移していきたい考えです。

学習指導要領 これまでの改定内容は

学習指導要領は、教科ごとの教育目標や教える内容などが定められていて、おおむね10年ごとに見直されています。

2002年度から2003年度にかけて実施された学習指導要領では、総合的な学習の時間が導入されたほか、毎週土曜日が休みになるのにあわせて、教える内容も3割ほど減りました。

それまでの「詰め込み教育」ではなく、ゆとりの中で、子どもたちに“考える力”をつけさせようというねらいでした。

しかし、学力低下のおそれが指摘されるようになり、教育内容を充実させる方向に変わっていきます。

2011年度から2013年度にかけて実施された学習指導要領では、「ゆとり教育」からの転換が鮮明になりました。

昭和50年代から減り続けてきた授業時間を増やし、国語や算数、理科など、主要な教科で授業時間がおよそ1割増えました。

小学校の算数の「台形の面積の計算」など、扱われないことになっていた教育内容も復活しました。

そして、2020年度から2022年度にかけて実施された現在の学習指導要領では、小学校5、6年生で英語を正式な教科にしたほか、主体的に学ぶ力を育てる「アクティブ・ラーニング」という学習方法が新たに取り入れられました。

今回の諮問で、文部科学省は、変化の激しい時代を生き抜くため、引き続き、こうした能力を育む必要があるとしています。

一方、教える分量が増え続ける中、教員の負担に向き合うことも必要だとしていて、新しい教育のありかたを構築する必要があるとしています。

今回強調されたのは「柔軟な教育課程」のあり方

生成AIなどのデジタル技術が急速に発達する一方で、増え続ける不登校の子どもたち。未来を担う子どもたちの教育をどのように行っていくのか。

今回の諮問で強調されたのが、画一的な教育から脱した「柔軟な教育課程」のあり方です。多様な子どもたちが主体的に、深く学べることを目指します。

具体的に想定されているのが、
▽授業時間の短縮などの工夫や
▽子どもたちの理解度に応じた授業の実現です。

現在、ほとんどの学校では、1つの授業時間を省令で例示されている、小学校で45分、中学校で50分にしていますが、いち早く短縮した学校では、子どもたちの変化に手応えを感じています。

“柔軟な教育課程” 短縮授業を導入した学校は…

目黒区の東山小学校です。

今年度から授業の時間を5分短くする「40分授業」を始めました。短縮しても質を落とさないよう、先生たちは授業の効率化を心がけています。

これまでは、教科書の見てほしい箇所を「何ページを見てください」と呼びかけていたところ、先生が該当箇所の画像を準備し、一人ひとりの端末に共有します。子どもたちが、ページをめぐって探す時間を省くためです。

5分の短縮で、昼すぎには5時間目までを終えます。ゆとりが生まれた午後に、新たに設けられたのが20分間の「自習の時間」です。何をするのかは、子どもたち自身が決めます。

3年生のクラスでは、計算や漢字のドリルをする児童や、別の教室に移動して、図工の課題制作に取り組む子どももいました。

さらに、一部の授業では、先生が画一的に教えるのではなく、子どもたち自身が学ぶ内容や順番を決められるようにしました。

例えば、理科の「磁石の性質」を学ぶ授業では、先生があらかじめ磁石にくっつく物質の種類や、N極とS極の仕組みなど、内容ごとにプリントを準備するほか、先生が実験のしかたを実演した解説の映像を用意します。

子どもたちが、自分の興味や関心に応じて、それらを使って学んでいきます。

定期的にテストを行い、子どもたちの理解度を確認していて、ほとんどの子どもが80点を上回り、学力低下などの影響は見られなかったといいます。

「今までの授業は、みんなと一緒にやっていたけど、自分の好きなペースで勉強できていいです。自分で実験もできて、理科が楽しいと思うようになりました」

担任 大嶋初美 先生

「前に学習した内容と、いま学習している内容を結び付けられる子が増えてきた気がします。これまで、受け身で授業を受けていたと思うので、こうした授業が子どもの考える力にもつながっていると感じます」

村尾勝利 校長

「新しい取り組みに教員も不安を感じていたが、子どもたちの変化に触れて教える熱意も、より高まってきたと感じます。子どもはみずから学ぶ力を秘めているので、それを実感させてあげたい」

専門家 “先生の働きがいなどとセットで議論を”

京都大学 石井英真 准教授

教育学が専門の京都大学の石井英真准教授は、今回の諮問内容について、「前回の学習指導要領のあとには、教員の負担や不足が深刻化しているし、コロナ禍を経て、子どもたちの多様性も顕在化している。その課題に向き合いながら、これまで学習指導要領が追求してきた『主体的・対話的で深い学び』をどう実現していくかが求められている」と説明します。

実現のためには、教員のサポートが不可欠だとし、「深い学びを考えるうえで、先生の負担が大きくならないよう、現場の取り組みを後押しする政策が非常に重要になってくる」と指摘します。

一方、デジタル教育の課題については、「健康上のリスクもあるし、デジタルタトゥーのリスクから、どう守るかも考える必要がある。また、ネットサーフィンをしていれば、学びが深まるわけでもない。学校の中で、デジタルとの適切な関わり方を学んでいくことが大事だ」としています。

そのうえで、今後の議論の進め方について、「先生が子どもたちと向き合い、共に学びを作っていくという当たり前のことができていない状態がいちばんの問題だ。先生たちの学びや成長、働きがいなどとセットで学習指導要領や教育課程のあり方が議論されていくことが重要だ」と話しています。

文科省 子どもにも意見求める 今回初の試み

文部科学省では今回の改訂にあたっては、来月から再来月にかけて、子どもの意見を直接、聞く機会を設けることにしています。

小中学生と高校生の年代の子どもたちを対象に、授業や教科書の内容についてや、将来に向けてどのような力をつけたいかなど、オンラインやアンケートで意見を聞き、今後の議論に反映させることにしています。

文部科学省によりますと、学習指導要領の改訂にあたって子どもたちから意見を聞く機会を設けるのは、今回が初めてだということです。